前回宣言した通り、11~20位のランキングです。
ワタクシには早くも波乱に満ちた展開が見えております。
では早速。
11位:
ジョニ・ミッチェル 『逃避行』(’76)
「吐く息さえ凍てつくような冬の朝、美しくも、途方もなく広大な白銀の世界に呆然としながらも、かすかに何かしらの希望を感じさせる情景」を彷彿とさせる音世界。はるか遠くまで見渡せそうなくらい透明かつ冷涼な空気感。
その世界を醸し出しているのがジョニのすぐれた楽曲とVocal、ジャコ・パストリアスのベース、そしてラリー・カールトンのギター。三人の天才が紡ぎ出す贅沢で美しい世界に、時間がたつのも忘れてしまう。
女性の心情を巧みに表現した歌の内容も素晴らしいが、男の自分にとっては少々ヘヴィーに感じられることも。
それもラストの「旅はなぐさめ」で救われる。永い旅路の先にかすかに見え隠れする希望。わずかばかりの解放感に包まれてこのアルバムは終わりを告げる。
12位:
アレサ・フランクリン 『スピリット・イン・ザ・ダーク』(’70)
名作、人気作の多い彼女の作品群のなかでは、あまり話題にのぼらない一枚だが、これこそ彼女の最高傑作だと私は信じている。
それどころかアメリカが生んだ黒人音楽が、その長い歴史の中で最高の形で結実した金字塔がこれである。
ダマサレたと思ってタイトル曲「スピリット・イン・ザ・ダーク」一曲だけでも聴いてみて欲しい。アメリカ黒人音楽の底力に打ちのめされること必至である。もちろんすべての曲において手抜き一切無し。
これを書いている今になって、どうしてこれをBest3内に入れなかったのかと悔やんでいる。
13位:
ここだけ色がカリフォルニアの青い空になっちゃいましたね。
Popsの中のPops、ミスターAOR、ネッド・ドヒニー旦那が満を持しての登場です。
この軟弱者め、と思われたアナタ。もっとちゃんと聴いてご覧なさい。
あまりにも完璧な楽曲、唄(Vocal)、そしてサウンド・プロデュースのクォリティの高さに気付いて驚愕してしまうこと間違いないのです。
とは言え、しち面倒くさいことを考えなくてもいいのが、Popsのいいところ。やっぱ夏にはこれだね。
14位:
ポール・バターフィールド・ブルース・バンド
『ポール・バターフィールド・ブルース・バンド』(’66)
本当はアタマに「ザ(The)」を付けるべきなんだろうが、このバンドの場合、ザを付けて呼ぶのがなんかメンドくさい。
評価が高く有名なのはこれに続く『イースト・ウェスト』だが、こっちの方が好きという人が意外と多いのじゃなかろうか。
のっけから「ボーン・イン・シカゴ」の、すさまじい熱を放つエネルギーにいきなりやられてしまう。
それがアルバム全編にわたって繰り広げられるのだが、その熱の高さにもかかわらず、演奏自体にガチャガチャしたところは一切なく、卓越したクォリティを保っている。録音状態はともかくとして。
それもそのはず、のちの世までブルース・ロック界に燦然と名を遺すポール・バターフィールド(ハーモニカ)、マイク・ブルームフィールド、エルヴィン・ビショップ(ともにギター)の三巨頭が腕を競い合っていたのがこのバンド。それを支えるリズム・セクションが黒人だったというのも大きい。
ブルース・ロックに興味を持たれた若い方は、まずこのアルバムから始めるのがいいかもしれない。何事も最初が肝心だからね。
The Paul Butterfield Blues Band
- アーティスト: ザ・ポール・バターフィールド・ブルース・バンド
- 出版社/メーカー: Elektra Asylum
- 発売日: 1988/06/07
- メディア: MP3 ダウンロード
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15位:
ビリー・ジョエル 『ピアノ・マン』(’73)
秋になると聴きたくなる。
これを聴いてると、爽やかな秋の青空の下、田んぼを焼く香りに包まれながら、自転車を飛ばしていたあの頃を想い出す。
「僕の故郷」「さすらいのビリー・ザ・キッド」がお気に入り。
16位:
最初に聞いたときの衝撃度という点ではこれが一番かもしれない。
ぼんやりした重苦しさが全編を覆っており、歌詞の内容も共感できるものは少ないが、それ以上の「何か」が聞いたあとに残るのも確かだ。
多分、キャッチ―なメロディとジョニー・マーのギター、それと反比例する重苦しさとのアンバランスが、その魅力を支えているのかもしれない。
17位:
ランディ・クロフォード 『ウィンド・ソング』(’82)
Jazzのクォリティを鎧にまとった黒人シンガー、といったところでしょうか。
しかし全然肩肘張っところはなく、このアルバムも、タイトルやジャケットから想像される通りの、爽やかな風が吹き抜けるような仕上がり。
でも、しっかり実力は見せつけています。
18位:
マンハッタン・トランスファー 『エクステンションズ』(’79)
立ち位置としては、ジャズ・コーラス・グループということになるのだろうが、それにしては何だ!このほとばしるPopセンスは!
どの曲もおしゃれで、粋で、聴きごたえ十分。
特に後半の「トリックル・トリックル」「シェイカー・ソング」が最高に楽しく、めくるめく「New Yorkの夜」を堪能させてくれる。
なぜかクリスマスが近づくと聴きたくなってくる。
19位:
ドナルド・フェイゲン 『ナイトフライ』(’82)
言わずと知れたド定番。
クォリティの高さはもはや語る必要なし。語る術無し。
20位:
ザ・プリテンダーズ 『ラーニング・トゥ・クロール』(’84)
最後を飾るのは”愛しの”プリテンダーズ。
率直に言って傑作というのがあまり無い人たちなんだけど(笑)、これだけはこよなく愛した一枚。
とにかく「チェイン・ギャング」という曲が大好きで、いつも抱きしめるように聴いていたものです。
「ミドル・オブ・ザ・ロード」(当時の邦題は確か「情熱のロックン・ロード」(笑))を最初に聴いたときの衝撃も忘れられない。ど真ん中ストレート豪速球一本やり(笑)のロックンロールで、いまだに車でこの曲をかけるときは大音量にして周囲のヒンシュクを買っている。
その他の曲も粒ぞろいで、買って損はない、はず。
Learning To Crawl [Expanded and Remastered]
- アーティスト: プリテンダーズ
- 出版社/メーカー: Rhino/Warner Records
- 発売日: 2007/06/01
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とうとう終わってしまいました。ハイ、批判は甘んじて受けます。
ボブ・ディランも、ビートルズも、エリック・クラプトンも、ジョン・レノンも、ジャニス・ジョプリンも、オールマン・ブラザーズも、ルー・リードも、EW&Fも、マーヴィン・ゲイも、プリンスも、み~んな出ませんでしたから。
ただ言い訳させてもらえるなら(笑)、ここに挙げたアーティストは若い頃はそれこそ死ぬほど聴きまくっていました。
ただここ数年、これらを聴こうという気が全く起こらないのです。歳のせいでしょうか(笑)。EW&Fをたまに聴くくらい。
お詫びと言ってはなんですが(笑)、彼らの代表作(もちろん私の好みで)を紹介だけさせていただきます。
ボブ・ディラン 『ブロンド・オン・ブロンド』(’66)
Blonde On Blonde (2010 Mono Version)
- アーティスト: ボブ・ディラン
- 出版社/メーカー: Columbia/Legacy
- 発売日: 2010/10/25
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まあ、一枚と言われればこれだろうか。
でももちろん『追憶のハイウェイ61』もいい。
ザ・ビートルズ 『ホワイト・アルバム(ザ・ビートルズ)』(’68)
真っ白なだけなのでジャケ写は無し(笑)。
The Beatles (White Album / Super Deluxe)
- アーティスト: ザ・ビートルズ
- 出版社/メーカー: UMC (Universal Music Catalogue)
- 発売日: 2018/11/09
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エリック・クラプトン 『マネー・アンド・シガレッツ』(’83)
ゴリゴリのクラプトン・ファンの皆様のご批判、お待ちしております。
でも何故これの評価が低いのかが、逆に分からない。全ての曲がいいし、全体のクォリティも非常に高い。妙に聴きやすいのが逆にダメなんだろうか。
Money and Cigarettes (2007 Remaster)
- アーティスト: エリック・クラプトン
- 出版社/メーカー: Reprise
- 発売日: 2007/08/22
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ジョン・レノン 『Walls And Bridges』(’74)
『サムタイム・イン・ニューヨーク・シティ』と迷ったが、こちらにした。いい曲が多いからね、やっぱり。
- アーティスト: ジョン・レノン& ザ・リトル・ビッグ・ホーンズ& ザ・プラスティック・オノ・ヌークリア・バンド& Philharmanic Orchestrange
- 出版社/メーカー: EMI UK Beatles
- 発売日: 2010/10/04
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ジャニス・ジョプリン 『チープ・スリル』(’68)
やっぱジャニスといえばこれだね。『パール』はあんまり好きじゃないし。
- アーティスト: Janis Joplin Big Brother & The Holding Company
- 出版社/メーカー: Columbia/Legacy
- 発売日: 2010/04/01
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オールマン・ブラザーズ・バンド 『フィルモア・イースト・ライヴ』(’71)
やっぱこれ、これしかない。名盤中の名盤。
- アーティスト: オールマン・ブラザーズ・バンド
- 出版社/メーカー: Universal Music LLC
- 発売日: 2016/07/22
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ルー・リード 『ベルリン』(’73)
これを聴いたら死にたくなってしまうというのは、ある意味ホント。まあ、これくらいで死にゃあしないんだが。
ひたすら暗いが、ひたすら美しい。その美しささえも悲しい。
EW&F 『太陽神』(’77)
EW&Fはどれもいいんだが、まあジャケットの美しさでこれ(笑)。
マーヴィン・ゲイ 『ミッドナイト・ラヴ』(’82)
高校生の頃はこれを聴きまくっていた。
プリンス 『1999』(’82)
プリンスのアルバムはどれも素晴らしい。特に80年代までは。結局『LOVESEXY』とこれのどちらにしようか迷ったが、『LOVESEXY』はジャケットがアレなんで(笑)。
まあ、これのジャケットも相当なもんだが。
以上をもちまして、洋楽アルバムランキングは終了です。ありがとうございました。
ただ、本当のことを言うと、私が本当にナンバー1と思っているアルバムはこのランキングには登場してません。もう、手に入らないもので。
それは「アパルトヘイトに反対するアーティストたち」(スプリングスティーンのところで紹介したEストリート・バンドのギタリスト、マイアミ・スティーヴ、またの名をリトル・スティーヴンこと、スティーヴ・ヴァン・ザントを中心に集まった)による、’85の『サン・シティ』です。
あれほどの衝撃、あれほどのグルーヴ、あれほどのカッコよさに遭遇したことはあとにも先にもありません。ああ、『サン・シティ』をまた聴きたい。でも無理だろうな。あのころとは政治状況もガラッと変わったからな。
でもなんとか再発してくれないかな。