Good Old Music 、Fantastic高校野球

林業家kagenogoriが70's~80'sの珠玉の音楽、そして高校野球、etc.についてのたまうブログ

21世紀のプリンス、その凄み

 殿下が衝撃的にこの世を去ってもうすぐ(3か月後)4年になろうとしている。

 もちろん、ファンクにとどまらない巨大な音楽的才能(映画の才能はあまり無かったらしいが)を世界中に向けてダダモレさせていた不世出の天才プリンスその人のことである。

Purple Rain [Explicit]

 

 いまだにその死が信じられない、と言いたいところだが、ワタシもこの歳(今年で55、信じられない)になれば、「人間、死ぬときは死ぬわな」などと達観ともアキラメともつかぬ心境になっている。

 

 それはともかく、ワタシは90年代後半以降のプリンスは全く聴いていなかった。

 95年『ゴールド・エクスペリエンス』を最後に殿下に見切りをつけてしまったのだ。

 89年バットマンのメガヒット以降の彼の音楽に、勢いも緊張感も感じられなくなった気がしていたからだ。(92年ラヴ・シンボルはまあまあ良かったけど。)

 

Batman [Explicit]

Batman [Explicit]

  • 発売日: 2007/01/30
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

 

[Love Symbol] [Explicit]

[Love Symbol] [Explicit]

  • 発売日: 2014/10/08
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

 

  21世紀に入ってからも、殿下が精力的に新作を発表していたのは知っていたけれど、興味は湧かなかった。

 なんだかジャケットもやけにチープなデザインになっていたし……。

 

 殿下の死後、各音楽雑誌の追悼特集でのディスコグラフィーを読んで21世紀盤に興味がわき1、2枚購入してみようと目論むも、非常に手に入りにくいことを知った。

 中古盤に異常な高値が付けられていた。

 

 ついこの間、正月休みも終わろうかという時に、プリンス21世紀作品が再発されていたのをAmazonでたまたま目にした。

 早速試聴。

 ………

 

 バカだった。オレはバカだった。

 なんでこれらをリアルタイムで聴かなかったんだ……。

 すごいじゃないか、プリンス!!

 

 最高傑作なんじゃないかというくらいの高密度の作品が次から次と…。

 すぐさま、とりあえず5作品を(もちろんカミサンには内緒で)購入。

 

 

 『The Rainbow Children』 

The Rainbow Children

The Rainbow Children

  • 発売日: 2018/08/17
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

 

 

 『Musicology』 

Musicology

Musicology

  • 発売日: 2018/08/17
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

 

 

 『3121』 

3121

3121

  • 発売日: 2018/08/17
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

 

 

 『Planet Earth』 

Planet Earth

Planet Earth

  • 発売日: 2018/08/17
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

 

 

 『20Ten』 

20Ten

20Ten

  • 発売日: 2018/08/17
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

 

 まだ十分に聴き込んでいないので、詳しくレビューすることはできないが、どれもこれも素晴らしい出来だということは分かる。

 はっきり言って、80年代の全盛期の作品群よりも数段進化している。

 これまでプリンスの最高傑作は(と言っても3枚.笑)、

 

 『CONTROVERSY』 (邦題:戦慄の貴公子』) 

Controversy [Explicit]

Controversy [Explicit]

  • 発売日: 2011/08/08
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

 

 『1999』 

1999 [Explicit]

1999 [Explicit]

  • 発売日: 2011/08/08
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

 

 『LOVESEXY』 

Lovesexy [Explicit]

Lovesexy [Explicit]

  • 発売日: 2011/08/08
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

 

だと思っていたが、改めねばなるまい。

 

 21世紀に入ってからも殿下は真摯過ぎるほどに音楽に向き合って、極上の作品群を連発していたのだ。

 

 音の一粒一粒が磨き抜かれている。

 相変わらず心地のいいBEAT

 無駄な音など一つも無く、それでいて豊かな音像世界。

 そのクォリティ―はスティーリー・ダンをとっくに凌駕している。

 いや、Jazzでさえも超えているのではないか。

 

 ワタシが年を喰ったせいかもしれないが、大人のプリンス、大人のRock、大人のFunkがやたら気持ちいいのである。

 

 ありがとう、殿下!

 そしてもう少しでも長生きしてほしかった。

 今更ながら、(再び)追悼…。

  

猫とコーヒー、時々ビル・エヴァンス

 今朝早起きして熱いコーヒーを飲みながら本を読んでおりました。

サムネイル画像

 

 膝の上にはスヤスヤと眠る

 

f:id:kagenogori:20190924092546j:plain

ウチのまる君です)
  暗い部屋の中、卓上ライトスタンドの暖かい光に照らされるコーヒーの湯気眠る

 猫を膝に乗せた状態でコーヒーを飲みつつ本を読む、というのも実はナカナカツカレルものなんですが、この情景には我ながらちょっとしばらく見入ってしまいました。

サムネイル画像

 ワタシはスマホというものを持ってません(笑)ので、この絶景を写真に収められないのがモドカシイ。

 

 こういうシチュエーションで聴きたくなるのはやはりジャズ

 と言ってもジミー・スミスでないことは間違いない(笑)。*1

 ここはやはりピアノですな。

 

 今日聴いていたのはビル・エヴァンス

 

 皆さんご存知の『ワルツ・フォー・デビー』(超絶名演「マイ・フーリッシュ・ハート」収録)や、 

ワルツ・フォー・デビイ

ワルツ・フォー・デビイ

  • 発売日: 2007/04/25
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

 

グリーン・ドルフィン・ストリート(正確には『オン・グリーン~』。サイドにフィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)、ポール・チェンバース(b)を得た名盤。美しいジャケットはもはや芸術) 

On Green Dolphin Street

On Green Dolphin Street

  • 発売日: 2015/02/11
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

 

なんかもいいけど、やはりに合う(?)のは『アローン(アゲイン)』でしょう。 

 言わずと知れたソロ・ピアノの歴史的超名盤。

アローン(アゲイン)

アローン(アゲイン)

  • 発売日: 2006/11/10
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

 

 ”(アゲイン)”ということは、当然その前にただの『アローン』があったわけで、一般に(というより評論家の)評価が高いのはソッチの方だったりするんだけど、ワタシは正直『アローン』の方はそれほど好きではないデス。

  演奏が硬質ガラス的過ぎて。

ALONE

ALONE

  • アーティスト:BILL EVANS
  • 出版社/メーカー: VERVE
  • 発売日: 2008/01/14
  • メディア: CD
 

 

 それはともかく、何故『アローン(アゲイン)』が猫(とコーヒー)に合うのか?

 

 それは、『アローン(アゲイン)』にはエロティシズムが、そこはかとなく漂っているから。

 

 個人的意見かも知れないけど、ってなんとなくエロティックな感がしません?

 あのしなやかな肢体と身のこなし、そしてツンデレな感じとか。

 女性っぽいといえば女性っぽいんだけど、あえていえば峰不二子的な(笑)。

サムネイル画像 

 それはともかく、『アローン(アゲイン)』を聴くにつけて、ワタシたちは「女性の神秘」*2にも似た「奥底に秘められたナニカ」を感じてしまうのでアリマス。

 

 それに加えてビル・エヴァンスの超絶的に速い指先から奏でられながらも、コロコロと粒の揃った音には「官能」以外の言葉など当てはまりませぬ。

 

 暗い部屋での読書。

 膝の上には猫。

 傍らにはかぐわしい湯気を立てる珈琲。

 

 『アローン(アゲイン)』がピッタリでしょ?

Alone Again

*1:ジミー・スミス:主に'50年代から'60年代にかけて大活躍したジャズ・オルガン奏者ファンキーかつグルーヴィーかつ歯切れの良いスピード感溢れる超絶技巧の演奏で人気を博した。意外と歌心もアリ。

*2:ユングの女弟子であり深層心理の大家であるエスター・ハーディングに同タイトルの名著がある。

12月9日は「山祭り」

 今日12月9日、ワタシたち林業関係者は「山祭り」でお休みです。

 

 「山祭り」って何?

 正直ワタシも詳しく知っているワケではないのですが(笑)、山の神様一年間の感謝を捧げ、これ以降になるまで山に入って仕事はしませんと(神様に)報告するお祭だと理解しておりマス、おぼろげながら(笑)。

 

 昔は本当にこの日以降、冬の間は山に入っての仕事はしなかっそうです。

 そして「春」のはじまりである3月9日にまたお祭りをとり行い、それ以降また冬(12月9日)になるまで山仕事をする、というサイクルだったそうです。

木, 株, ログイン, ような, Holzstapel, 塞ぎます, 断面

 ワタシがまだ新米だった頃の、老師匠に聞いたハナシです。

 

 この「山祭り」という風習(?)が全国的にあるものなのか、それともこの地方特有のものなのかは、よく分かりません。

 またいつの頃からの風習なのかも、全く分かりません。

 興味深いテーマではあります。

 いつか詳細に調べてみたいものデス。

 

 それはともかく、現在では「山祭り以降冬のあいだは山仕事をしない」といったことは全くなく、この日だけ山仕事を休み、翌日からまたフツーに山に入って仕事をします。

林業, インベントリ, 林業作業, フォレスト, 木, 木立, ケース, 見た, 労働者, チェーンソー

 何といっても樹木の「伐り旬(きりしゅん*1ですので。

森林, 木の幹, 木, ログ, 環境, 冷, 冬, 雪, 木材, 林業, 荒野 

 それにワタシは、山仕事ではが一番スキです。

 山の中を深い雪をかき分けながらする仕事は、

雪に埋もれた木々の写真

多分に危険も伴い、また体力もいつも以上に消耗したりもします。

 が、やはり冬の山、冬の森は美しい

雪で白く染まった森の木々の写真

 それに空気も冷たいけど澄み切っててオイシイし、蚊やブト(ワタシたちの地方ではブヨのことを”ブト”と呼びます)などのイヤな虫もいませんので。

 

 たしかに早春の芽吹く頃から新緑にかけてや、

新緑と木漏れ日の写真

晩秋の紅葉から落ち葉の時期も美しく楽しいものです。

赤く色づくモミジの写真栗駒山の紅葉の写真

 

枯葉色

 

 しかし真冬の一面真っ白の銀世界となった雑木林

日で輝く樹氷の写真

で、快晴となった日に葉がすっかり落ちた枝越しに見上げる真っ青な空

霧氷, 冬山, 青空, 静寂, 静けさ

 これほど美しいものはないこともまた確かなのデス。

 

*1:野菜などの作物にもそれぞれの「旬」があるように、木材となる樹木にも”収穫”に適した「旬」があります。一般に、木が水を吸い上げない冬が、樹幹に余分な樹液やヤニが少ない「旬」の時期と言われておりマス。

自然を相手にする仕事

 ワタクシkagenogoriは、林業を生業にしております。

 仕事場といえばほぼ山の中森の中

風景, 森林, 秋, 黄葉, 太陽光, 光芒, ブナの原生林, 白神山地

 ときには死亡事故さえ発生する危険な仕事ではありますが、仕事上のストレスという点では、他の仕事よりは格段に少ないように思いマス。

 何と言っても大自然のなかで仕事ができるんですから。

 ただ、危険だということを除けば楽しいバラ色の仕事なのかといえば、そうでもないのデス。

 

 昨日仕事中に悲しい、というかちょっとショッキングな出来事がありました。

 いまの仕事の現場となっている山中に、立ち枯れて腐ってしまってからかなり年月が経っているであろう一本の木。

 おそらくコナラの木と思われますが、そのままではいつ倒壊してしまうか分からず、大変危険な状態でした。

 そこで仕事をする以上、真っ先に伐らなければならない状況。

 ワタシは迷わず、その立ち枯れ木をチェンソーで伐倒しました。

サムネイル画像

 ヤレヤレと思いながら倒した木をいくつかに玉切りして片付けていたところ、足元になにやら小刻みに震えている小さなモノ。

 ヒメネズミです。

木マウス, Nager, かわいい, 小, 茶色, マウス, 自然, 哺乳類

 目をつぶって小さくボール状に丸まっています。

 ピンポン玉よりも小さな生命。

 体毛は生えそろっていますが、おそらくまだ子供なのでしょう。

 かわいいといえば、こんなにかわいらしい生き物はいない。

 それが今、ワタシの片手の上で、寒さのせいなのか恐怖のせいなのか、目を閉じたまま震えている。

 間違いなく、ワタシが倒した木のウロに作られた巣から放り出されたのです。

マウス, 齧歯動物, かわいい, 哺乳類, Nager, 自然, 動物 

 同じく巣から放り出された親ネズミも近くにいるに違いありません。

 しかしワタシたちがそこを”仕事場”としている以上、親ネズミが子供を救いにその場に姿を現すことはないでしょう。

 仕方なくワタシは子ネズミを、範囲外にあるナラの木の根元に、たくさんの落ち葉にくるんで置いておきました。

「どんぐりと落ち葉」の写真

 もし親ネズミがそこに気付けば、子ネズミを新しい巣へと運んでいけるように。以前同じような状況で親ネズミがせっせと子ネズミたちを運んでいるのを見たことがあります。

 ただし今回の場合は、親ネズミがその子ネズミの存在に気付く可能性は低いように思いました。

 しかし仕事中だったワタシにはそうすることしかできないのです。

 それぐらいのことしかできないのです。

 

 しばらくするともう一匹、近くで別の子ネズミが死んでいるのを見つけました。

マウス, 木マウス, アカネズミSylvaticus, 死者, 死んだマウス

 仕事中だったワタシは素早く別の木の根元に小さな穴を掘り、埋めました。

 すまん、許せ。と言いながら。

 

 考えるまでもなく、ワタシ達の仕事(林業)は常に生き物の殺生にかかわる仕事です。

木材, 森, 林業, ネイチャー, ツリー, 風景, 夏, 林, 光, アルプス, 経済学の森

 夏場の草刈では、刈られた草木はすぐに回復するでしょうが、昆虫をはじめとする実に多くの生き物は、自分たちが気付かないだけで、その命や棲みかを奪っているにちがいありません。

サムネイル画像サムネイル画像 

 一本の木を倒すとき。

 その木の命を奪うだけではなく、その木には「生態系」といっていいほどの様々な生き物が暮らしているものです。

アニマル, 森林, 木, 鳥, 野鳥, 啄木鳥, キツツキ, コゲラ, 日本

 長い間この仕事を続けているとマヒしてしまいそうになりますが、この仕事は多くの(食料にするわけでもない)生き物の殺生にかかわることから逃れられない仕事でもあるのです。

 

 そのような自覚があるとき、ワタシはいつも一つの言葉を心の中でつぶやきながら仕事をしています。

 「すまん、ゆるせ

 草木を刈るとき。

 一本の木を伐るとき。

 一日中この言葉を心の中で呟きながら仕事するときもあります。

木の切り株, 木, ひき, 林業, フォレスト

 命や棲みかを奪われる生き物たちにとって、「すまん、ゆるせ」と言ったからといって、なんの慰めにもならないことは百も承知。

 しかしワタシにはそうすることぐらいしかできない。

 

 このような考えは、同業者からすれば「甘い」の一言なのかもしれませんが。

 しかし、生き物の殺生にかかわっているという自覚だけは持ちつづけていたい。

アニマル, 森林, 緑, 鳥, 野鳥, メジロ, 木漏れ日, 日本, 自然

ポッカリ空いた心の隙間にやたら染み入るデクスター・ゴードン

 父の死から早や十日が過ぎマシタ。

 あれ以来、音楽と言えばジャズしか聴いていない。ジャズしか聴く気がしない。

 前回、マイルス・デイヴィスの音楽が思いのほか「優しかった」ことを述べたワタシ。

 これまでウン十年、マイルスの音楽には、ハード・ボイルドなイメージでしか接して来なかったのですが。

 

 そして今もっぱら聴いているのは、デクスター・ゴードン

Dexter Blows Hot and Cool (Remastered)

 このヒトのテナーも昔から大好きで聴いているが、このヒトの音楽の「優しさ」にはさすがに以前から気が付いていた。

 というかたびたび癒されたり、救われたりしてきマシタな。

Go

 もちろんデクスターの持ち味は、素っ頓狂にも思えるヒトを喰ったような天才的なプレーにあるのはもちろんのこと。

 でもこれもよく知られているように、バラードにおけるプレイが天下一品、唯一無二ナンデス。これがまた。

 

 ジャズでもとくにサックスでよく使われる表現で「歌ってる」というのがある。

 もちろん歌心溢れるプレイ(それには超絶的な技能が必要なのは言うまでもない。ワタシはよく分からんが.笑)を指していうホメ言葉なんだけど、デクスターのバラードは本当に歌っているように聴こえる。

 デクスターが死ぬ直前に主演した映画『ラウンド・ミッドナイト』では、デクスター演じる伝説のサックスプレイヤーが、(確か「ニューヨークの秋」だったと思うけど)歌詞が思い出せなくてそのフレーズを吹くことが出来ない、と語るセリフがあった。 

 

ダディ・プレイズ・ザ・ホーン

ダディ・プレイズ・ザ・ホーン

 

  それは単に映画のなかの決められたセリフだったのかも知れないけど、デクスターなら本当にそういうこともありそうだ、と思わせるリアリティがあった。 

Doin' Allright

Doin' Allright

 

 

 それだけではなくてデクスターは、自身が重度の麻薬中毒で、非常に苦しい後半生を生きたヒトだった。

 そんなデクスターには辛かったり悲しんでいるヒトの気持ちが分かるのだ、とは言わないけれど、このヒトはたとえヒトの気持ちが分からなくても、そのサックスプレイでヒトの気持ちに寄り添うことが出来ヒトなのだ。 

One Flight Up

One Flight Up

 

 

 だからワタシはデクスター・ゴードンを愛してやまないのだ。

 だから今もデクスター・ゴードンを聴く。

 肉親が死んで(悲しいということではないけれど)心の中がポッカリ空いたようになった今、デクスターを聴いている。

 癒されたいわけではない。

 ただ何となく、ココロの奥底がデクスターを求めている。そんな気がする。

 デクスター、ありがとう。 

ア・スインギン・アフェアー (紙ジャケット仕様)

ア・スインギン・アフェアー (紙ジャケット仕様)

 

 

ラウンド・ミッドナイト [DVD]

ラウンド・ミッドナイト [DVD]

 

父の死

 先日、父が他界シマシタ。

 

 危篤状態となってから一週間近く、父は酸素マスクの下で口を常に開けっ放しにしながら、苦しそうに、しかし頑張って呼吸をしていました。

 心拍数は最初140前後で、その高さに驚きましたが、それからも徐々に上がり続け、最後の二日ほどは165前後にまで達していました。

 

 危篤が伝えられてからは、ワタシと姉の二人で交替で見守り続け、容態が変化すれば母と共に実家にいる相手に知らせる手筈でした。

 

 しかしあまりにも突然でした。

 その時、かたわらにいたのはワタシ一人。

 心拍の急激な落ち込みを告げる、けたたましいアラーム音が鳴ったかと思いきや、父の呼吸がスッと止まりました。

 病院まで5分とかからない実家に待機している姉と母に、すぐ来るように連絡。

 近くの病室にいた医師と看護師たちもすぐに駆け付けて来ました。

 が、彼らは父の状態(表情など?)を見てすぐに事態を悟ったようでした。

 数分後、医師により父の臨終が告げられました。

 父の最後を傍らで見届けることが出来たのはワタシ一人でした。

 その時、窓からちょうど朝日が差し込んできたのが印象的でした。

 母と姉は出てくる際にバタバタしたようで、ようやくその十分後ぐらいに到着。

 二人とも泣いていました。

 

 医師の説明によれば、直接の死因は肺炎。若い頃の喫煙に原因があったとか。(あとでそのことを喫煙家であるワタシの息子に告げるとウーンと唸ってイマシタ.笑)

 しかし広い目で見れば老衰によるものと言ってもよく、大往生だとも言ってくれました。

 

 それからはあれよあれよという間にコトが進んでいきました。

 

 まず事態が落ち着いたところで担当の看護師さんが、喪主になるであろうワタシに一つのリストを持ってきました。

 遺体を病院の霊安室から「寝台車」で自宅(実家)へ運んでくれる葬儀屋のリストです。

 ワタシがそこからひとつ選んですぐに連絡。

 死の瞬間からはやくも二時間後には、寝台車に乗せられて父の遺体は実家に到着していました。

 

 ほぼ使われることの無かった仏間にワタシと葬儀屋さんで父を運び入れ、それから葬儀屋さんは遺体の床への安置や焼香台の設置などを実にテキパキと済ませていきました。

 

 ここ数年、痴呆症と寝たきり状態で施設と病院のベッドを行ったり来たりで、「家に帰りたい」と顔を合わせるたびにつぶやくように訴えていた父ですが、その死によって、ようやくその願いが実現したカタチとなりました。

 

 しかしワタシはといえば、感傷に浸る暇もないまま、葬儀屋さんとその後の段取りの打ち合わせ。

 

 宗教ギライで、しかも仕事を引退したあとは半分「世捨て人」のようになっていた父は遺言で、葬儀は行わず、寺のお坊さんも呼ばないようワタシたちに伝えていました。

 それでもワタシと姉は事前の相談で、それでは成仏できないのではないかと、お経だけはあげてもらおうと決めていました。

 結果、

  • 身内だけ(母、姉家族、ワタシの家族、父の弟夫婦)の家族葬にすること。
  • しかし葬儀場で行う一般的な家族葬ではなく、家でお坊さんにお経だけ上げてもらう形にすること。
  • 火葬場でも火葬前にお経を上げてもらうこと。
  • 葬儀屋さんにはお経を上げてもらう寺の選定(宗教ギライだった父は当然どこの寺とも関係を持っていなかった)と連絡、火葬場へ向かう霊柩車の手配、役所への死亡届の提出と火葬場の認可届けの代行などをお任せすること。
  • 新聞への掲載は一切しないこと。

などを葬儀屋さんにお願いし、そのような段取りで動いてゆくことにしました。

  一晩を父と過ごした翌日、ワタシは喪主として火葬場へ向かう霊柩車に乗り込みました。

 

 

 火葬場への道すがら、薄曇りだった空を見上げると、おひさまの周りには日輪がかかっていました。

 

 そして父の死の翌日の夕方にはすべてが片付いていました。

 大げさな葬儀にしなかったこともあって、じつにあっけないものでした。

 ワタシは父の死の瞬間からそれまで、一度も涙を流していないことに気付きました。

 死を看取ったあとも、悲しいというよりは、苦しいそうだった父の表情が静かなものになったのを見てむしろほっとした感じに近いものだったように思います。

 死んだ父に最初に心の中でかけた言葉も、

「やっとで苦しさから解放されたな。やっとラクになってよかったな。がんばったな、親父」

でした。

 それからも悲しさよりは、なんとも言葉にし尽せない「空虚さ」のようなものに包まれているような感じがします。

 

 役所の手続き的なものがまだ残っていましたが、疲労がかなりたまっていたこともあって、いったん自宅に帰って、翌朝また実家にもどることにしました。

 車の中では常に音楽を聴いているワタシ。

 実家から自宅へ戻る道中も何か聴きたいと思いました。

 何がいいか。

 歌モノはあまり聴く気になれませんでした。

 JAZZが聴きたいと思いました。

 プレイリストからまずジャッキー・マクリーンを選択。

 ちょっと賑やかすぎた。

 

 つぎにマイルス・デイヴィスを選択。

 これがよかった。

 まずはキャノンボール・アダレイ名義の「枯葉」。

 そして「ラウンド・ミッドナイト」、「ディア・オールド・ストックホルム」、「ユアー・マイ・エヴリシング」……。

 

 フロントガラスの向こうに広がる空虚な空に吸い込まれるようなマイルスのトランペット。

 疲れたカラダとココロにそっと染み込んできます。

 マイルスを聴き始めて何十年。

 マイルスの音楽がこんなにも「優しい」ものだとは、今の今まで気が付きませんでした。

 なぜかこの時だけ目が潤んできました。

 泣きはしませんでしたが(笑)。

 

 親父の魂はいまどのあたりにいるんだろうか。

 空を見上げることが多くなっているワタシです。

f:id:kagenogori:20190924092539j:plain(いまのワタシの心境をもっともよく表している写真がこれデス。モデルは去年の秋に大往生を遂げたタマちゃんデス。)

 

 

Somethin' Else (Rudy Van Gelder Edition)

Somethin' Else (Rudy Van Gelder Edition)

 

 

Blu-spec CD ラウンド・アバウト・ミッドナイト

Blu-spec CD ラウンド・アバウト・ミッドナイト

 

 

リラクシン

リラクシン

 

 

珠玉の70's-80's Japanese Pops & Rock(13) 『風立ちぬ』~大瀧詠一✖松本隆が紡ぐファンタジー~

 初期(~’83年頃まで)の松田聖子は一年に2作、すなわち半年に一回、季節感を大切にした良質のアルバムを世に送っておった。

 春夏カラーのアルバムと秋冬カラーのアルバム。

 春夏の傑作がこれまで何度か紹介した『Pineapple』なら、秋冬の傑作は間違いなく風立ちぬである。

風立ちぬ

 まぎれもない大傑作。

 それもそのはず。

 前半5曲(要するに当時のA面)の作曲と作詞はすべて大瀧詠一

松本隆の黄金コンビの手に依っているのだから。 

風立ちぬ

風立ちぬ

 

  大瀧✕松本のコンビは、大瀧自身のソロ・アルバムはもちろん、謡曲などにも優れた楽曲を提供するなど、作品数こそそれほど多くはないものの、当時のJapanese Popsにおいてはトップ・ソングライティング・チームだった。

 大人の恋愛をテーマにした曲を得意としつつも、大瀧独特のメロディの影響もあり、どことなくファンタジックな印象を漂わせる曲が多かったが、時には両者のファンタジー志向*1をそのまま形にしたような曲もいくつか作っている。 

 

 松田聖子4作目となる’81年秋に発売された風立ちぬにおいて、このソングライティング・チームはこのアルバムA面をファンタジー一色に染め上げ、それまで「謡曲」の王道を行きながらも、「Pops」シンガーとして覚醒しそうで覚醒し切らなかった松田聖子の新たな魅力と可能性を最大限に引きずり出してしまった。 

風立ちぬ

風立ちぬ

 

  一曲目の冬の妖精に始まり、一千一秒物語」「いちご畑でつかまえてといった、タイトルを見ただけその世界に没入できそうなロディックなPopナンバーをそろえ、受けて立つ(?)松田聖子もその天才的な感性で完璧なまでに、ファンタジー溢れる世界観を表現し切っている。

 そしてA面ラスト、10代の少女から大人への”新たな旅立ち”を、自ら見つめる女性の想いを綴った名曲、風立ちぬへとバトンが渡る。

 

 大瀧自身のソロ・アルバム『EACH  TIME』に収録されたファンタジー「魔法の瞳」には”~飛べなくなったピーターパンに 妖精の粉 振りまいておくれ”という名フレーズがある。 

EACH TIME 20th Annniversary Edition
 

  ”大人”という新しい世界に足を踏み入れれば、得る物ももちろん多いが、失ってしまう物も、また実に多い。

 大瀧詠一は、そのような色んなものを失ってしまった”自分”に「妖精の粉をふりまいておくれ」と歌ったのだ。

 

 大人の女性への旅立ちの曲風立ちぬに至るまでのファンタジー溢れる曲も、まさに”星屑のようにキラキラ光る妖精の粉”なのだろう。 

 

 それは、”大人”になってしまった人に、そしてこれから”大人”になろうとしている少年や少女に送られた、「いつでも帰って来られる場所があるんだよ」とそっと教えてくれる素敵なプレゼントなのである。

 

 

*1:大瀧については言うに及ばないが、松本ものちに、最も思い通りにできた仕事として南佳孝のファンタジックなコンセプト・アルバム『冒険王』を挙げている。