これは今週のある現場で撮った一枚である。
いや、実際は撮ったというより撮ってもらった(笑)のだが。
四季によって、天候によって、さまざまに色彩や表情を変える日本の自然と風景。
こういうモノトーン的世界も日本らしくていいですな。
林立する巨大な人工物である高圧鉄塔も、大空の下では実にちっぽけな存在に見える。
ここは再度、泉谷しげる の「春夏秋冬」にご登場願おう。
季節の無い街に生まれ
風の無い丘に育ち
夢の無い家を出て
愛の無い人に会う
‥‥‥‥‥
今日ですべてが終わるさ
今日ですべてが変わる
今日ですべてがむくわれる
今日ですべてが始まるさ 「春夏秋冬」より
この歌は「春夏秋冬」というタイトルとは裏腹に、色彩感はまったく無い。
四季の移ろいとともに描かれるのは、無味乾燥な人生のなかでの出会いと別れ、それでも代わり映えの無い日常。
モノトーンの世界。
しかしこの主人公が渇望するのは、そういったモノトーンの日々を抜け出した先に待つはずの、色彩ある日々である。 そのための変化、である。
変化なくして進歩も進化も無い。
ただ、そこに向かう姿勢だけはブレずに。
しかし………
「ぼくはいつもぶれている」
音楽家・細野晴臣翁の名著(といっても対談形式だが)『分福茶釜』における翁の第一声がこれである。
常に「ブレない」ことが評価され、常に「ブレない」姿勢がカッコイイとされるのが、この世の中。
逆に「ブレる」ほうはというと、フラフラしてるだの、一貫性が無いだの、コラマジメニヤッテンノカだの、まぁ散々である。
常にスピード感ある成果を求められ、何もかもに「ゴーリテキ」を求める社会にあってはいたしかたの無いこと、ではある。
しかし細野翁は、その姿勢、その考え方に、のっけから冷や水を浴びせてくるのである。
もちろん、「ブレない」ことが大切であることは言うまでもない。
早い話、行きつけのラーメン屋の店主が、
「ボクはいつもブレている」
なんて言って、毎日味は変えるわ、盛り付けは変えるわ、値段も変わるわ、では常連客も店のスタッフもタマったもんではないだろう。
そういうことは、フレンチレストランの「~ シェフの気まぐれランチ ~」ぐらいに、とどめておいてもらいたいものである。
細野翁が「ぼくはいつもぶれている」と言った真意とは何なのだろうか。
翁は言う。
「中庸」が大事なんだ、と。
中庸。
右にも左にも、アッチにもソッチにもいかず、ただド真ん中をヒタスラ真っ直ぐに歩く。
ということでは実は無いんだよ、と翁は表情も変えずにのたまうのである。
翁の考える「中庸」とは、右も左も、アッチもコッチも、両方行かないとその間の真ん中にはならんよ、ということなのである。
アッチとコッチの中間(=境の場)にいて、両方を自由に往き来する存在にトリックスターがいる。
まさに『境の場の住人』トリックスターたる細野晴臣の面目躍如であろう。
なお、境の場(の住人)、トリックスターについてはワタシの歴史ブログ『古代史は小説より奇なり』をご参照のほど。
今月中に読者登録された方には、モレ無く「kagenogori握手券」が当たります。 (←ウソですよ!ウソ!笑。 つーか、そんなもんイラネーヨって話だよな.笑)
ハナシを戻せば(笑)、細野翁が言うにはそれは「振り子」のようなもの。
振り子は常に揺れているが、その中心は常に変わらない。
揺れる、ブレる、振動する、というのは宇宙の法則。
綱渡りだって、静止したら倒れてしまう。
綱の上で常にブレているからこそ、安定する。
人間の観念も同じだよ。
変わらないもの、安定したものを求めるのならば、常にブレろ。
というのが、翁の主張。
中庸、という概念に関する解釈が細野翁の言う通りでタダシイのかどうかは、ワタシは知らん。
細野ファンでもあるワタシは、ただ、この”教え”を読んでアリガタイ気持ち(笑)になるだけである。
常に変化している(ブレている)からこそ、変わらないモノ、安定したモノが得られる。
これも一つの考え方であろう。
実は文学にしても映画にしても、そしてRockにしても、「永遠に変わらないサムシング」(真実…愛…etc.)を求めて、日々、あるいは時々刻々と変化を続ける人生、あるいは心理を描いているものが多いようにも思う。
先ほどは、変わらない日々を抜け出すための変化、そのためのブレない姿勢、と言った。
「変わらないモノ」のための「変わるモノ」。
「変わるモノ」のための「変わらないもの」。
両者は陰陽のごとく、互いに補い合う相補的関係にあるのだろう。
どちらかが欠けても、マズイことになる。
「ブレないこと」がもてはやされる昨今の合理主義的世界では、尚のこと、ブレることの重要性はもっと語られてもいいはずである。
変化を、ブレることを、恐れるな。
なぜなら、人も、人を包んでいる世界も、常に変わり続けるものだから。
てなワケで、今回はタイトルに「チェンジ」の付く曲を集めてみました(^^)/
歌詞の内容は、あえて詮索しない(笑)でいただきたい(^▽^)
「マイ・エヴァ・チェンジング・ムーズ」
これは、5分を越える12インチヴァージョン(懐かしい!!笑)。
ワタシはこの曲を聴くときは、このヴァージョンしか聴かないことにしている。
フツーのヴァージョンとはカッコよさが全然違うからね。
「チェンジング・エヴリデイ」
名盤『カラー・バイ・ナンバーズ』の中の一曲。
このアルバムは他にも名曲が目白押しだが、ワタシのお気に入りは「タイム」と「ミス・ミー・ブラインド」 。
とどめはこれだ。
フィッシュボーン 「チェンジ」
これも名盤『トゥルース・アンド・ソウル』の一曲。
ミクスチャー・ロックの寵児として暴れまくった彼らにしては、珍しく美しい曲(笑)。
オレたちの心の奥深くには
愛がある
君にもわかるだろう
それはオレたちには 変化を求めて叫ぶことが
できると確信させてくれるような愛なんだ
このオレの目の前で
踊っていた暗雲は 青空に消えてしまった
それでオレの目にもハッキリと見える
オレたちは変化を求めて 声を上げられるんだ
「チェンジ」より
細野晴臣の『分福茶釜』 (ヨクヨク考えるとこの「分福」の字も違うような気が……。笑)は、細野さんのこのようなアリガタイ教えが一杯に詰まっていながら、ジツに読みやすく楽しい本である。
ダマサレタと思って一度読んでみられよ。
ナニ、洗脳される心配など無用。
細野さん自身がブレッブレなんだから(笑)。