Good Old Music 、Fantastic高校野球

林業家kagenogoriが70's~80'sの珠玉の音楽、そして高校野球、etc.についてのたまうブログ

つ、ついに不朽の名盤『SUN CITY』がわが手元に

Sun City: Artists United Against Apartheid [LP] [Analog]

 

 数十年ぶりである。

 この大地を揺るがすようなBEAT

 魂を揺さぶる叫びに

 我が身をゆだねたのは。

 

 

 昨年、日本中を、いや、世界中を大いに沸かせたラグビーW杯

 大躍進を遂げた日本代表チームを準々決勝で撃破し、

 決勝でもイングランドを圧倒して優勝を果たした南アフリカ代表

 白人選手と黒人選手が共に手を取り合って力を尽くして勝ち取った、感動的な優勝だった。

 

 

 

 今の若い人たちは知っているだろうか。

 

 かつての南アフリカ

アパルトヘイトという悪しき制度があったことを。

 

 その詳しい説明や歴史的経緯をここで述べるつもりはないが、

 一言で言えば「人種隔離政策」のことである。

 

 白人と黒人、そして有色人種は厳格に区別され、

 白人以外をすべて差別の対象とする「制度」だった。

 

 いや、例外があった。

 日本人である。

 

 貿易相手として南アフリカの経済におおいに「貢献」していた日本

 

 日本人だけは名誉白人の”称号”を与えられ、

「ある程度」、白人と同等の扱いを受けることを「許されていた」。

 

 日本中がバブルに浮かれ、

 パリのブランド専門店に集団で訪れてはブランド品を買いあさり、

 日本人そして日本人ビジネスマンが「エコノミック・アニマル」と

 世界中で揶揄されていた頃のことである。

 

 そんなに昔の話ではない。

 世界中からの猛烈な批判と反対運動を受け、

 初めて実施された全人種による総選挙

 ネルソン・マンデラが大統領となり、

 この制度が撤廃されたのはほんの25年ほど前、1994年のことである。

 

 その大きな流れのささやかなきっかけの一つともなった(少なくともワタシはそう信じている)のが、

 この不朽の名盤、 『サン・シティ』である。

 

 

 サン・シティとは、その南アフリカにあった一大リゾート地の名前である。

 

 もちろん当時は白人のためだけのリゾートであった。

 いまでもあるのかは知らない。

 

 サン・シティでは白人の観光客のためにいろいろなイベントを催していた。

 

 世界的に著名なアーティストを招いての

 ロック・コンサートもその一つだった。

 

 ”招く”と言っても世界的な批判を受けていた頃のことだから

 巨額のギャラで”釣る”しかない。

 

 それでそれなりに多くのアーティストを招くことができた。

 ロッド・スチュアート

 そして、いまや”崇敬”の対象ともなっている(ワタシも大好きだった)

 クィーンなども招かれて、多額の報酬を得ていた。

 

 一方そのような状況も含めて、

 事態を憂慮するピーター・ガブリエルのようなアーティストも

 当然多くいた。

 ブルース・スプリングスティーンのバックをつとめた

 E・ストリート・バンドのギタリストで、

 ソロ活動のときはリトル・スティーヴンとも名乗っていた

 マイアミ・スティーこと、

 ティーヴ・ヴァン・ザントもその一人だった。

 

 彼はアルバム・タイトル曲ともなる「SUN CITY」を書き上げると、

 賛同する多くのアーティストたちに声をかけ、このアルバムを作り上げた。

 

 ロック、ソウル、ファンク、ジャズ、ヒップ・ホップ

 そしてアフリカのミュージシャンなど、

 さまざまな分野のアーティストたちが参加した。

 

 その名もアパルトヘイトに反対するアーティストたち」 (Artists United Against APARTHEID

 

 そこには人種の壁も、ジャンルの壁も無かった。

 ティーヴ・ヴァン・ザント 、 

 盟友のスプリングスティーンクラレンス・クレモンス

 ピーター・ガブリエル 、  ホール&オーツ

 U2ボノ 、   ルー・リード 、  Run-D.M.C. 、 

 JAZZからは御大マイルス・デイヴィス

 ハービー・ハンコック 、  ロン・カーター 、‥‥‥etc.。

 

 

 

 参加メンバーのダリル・ホールは、

 

 ギャラのためにリゾート地サン・シティで歌った

 クイーンロッド・スチュアートを名指しして、

 

「クソ野郎」と罵った。

 

 熱い男である。

 

 

 

 Run-D.M.C. をはじめとするラッパーたちも

 音楽の壁を越えて集結した。

 

 彼らは「Let Me See Your I.D.」で皮肉たっぷりに、

 しかし怒りを込めて、熱く、COOLなラップを披露した。

 いまのヒップ・ホップ好きの若者たちにも、ぜひ聴いて欲しい曲である。

 

 

 ”手下ども”を引き連れたマイルス・デイヴィスも、

 いつも以上の鋭い眼光をギラつかせ、いつも以上に眉間にシワを寄せながら、

 やはり熱くCOOLに演奏してみせた。

 

 「The Struggle Continues」

 ”闘い”はまだ終わっていない。

 

 常に何かと”闘って”きたマイルス

 ジャズ史にも残るべき名演となった。

 

 

 これ以外の曲もヒップ・ホップなのか、

 ロックなのか、ジャズなのか、

 アフリカン・ミュージックなのか、判然としない曲が多い。

 

 すべての音楽的要素が、混然一体となり、融け合っているのだ

 

 

 白眉はやはりタイトル曲「SUN CITY」である。

 

 激しく熱い、大地のBEAT。

 魂の咆哮。

 

 そうなのだ。

 この二つこそが、この曲に限らずアルバム全体を流れる血潮であり鼓動。

 

 ただ根底にあるのはRockのスピリットである。

 

 ワタシはそう思う。

 

 このアルバムを聴かずしてロックは語れない。

 

 

 

 

 これを聴かなくなって数十年。

 若い頃引っ越しを何度か繰り返したこともあって、レコードを紛失。

 多分捨てられたのだろう。

 

 

 ここ数年、久しぶりに聴きたくなってAmazonなんかをチラチラのぞいてみたりはしていたものの、中古の古いCDかレコードしかなくて断念、を繰り返していた。

 昔のCDは音質悪いし、レコードプレーヤーも持っていないし。

 

 

 昨日(3/21)のこと。

 Amazonで何十度目かの「サン・シティ」検索を行ったところ、

 いつもは見ない文字列が。

 

 ”MP3ダウンロード”。

 

 目を疑ったが、キーボードを打つ手が震えるのもモノともせず、

 一も二もなくダウンロード。

 

Sun City: Artists United Against Apartheid (Deluxe Edition)

Sun City: Artists United Against Apartheid (Deluxe Edition)

  • 発売日: 2019/12/06
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

  

 そして数十年ぶりのヨロコビ、感動、熱い思い(笑)。

 エラソーに曲の解説なんかしてみたけど、

 実際は忘れていた曲もあったりした(笑)。

 

 とりあえずこれでまた、あと数十年は生きられる(笑)。

 まわりはメーワクかも知らんが(笑)。