梅雨の季節が来てしまいましたね。
今回は「雨の日に聴きたくなるJapanese Popsの名曲を紹介します。
山下達郎 「2000トンの雨」
達郎には雨の名曲も多い。
個人的に一番好きなのが『Go ahead!』のラストのこの曲。
なにもかもうまくいかないとき、傷心の自分を癒すのは、土砂降りの雨。終わりのない大粒の雨に打たれて、ひとりただ立ち尽くす。
『Moonglow』収録の「Rainy Walk」、『RIDE ON TIME』収録の「Rainy Day」も秀逸。シルクのような雨の日の空気感を、無駄をそぎ落とした少ない音数と自らのVocalで、完璧に表現しきっている。
やっぱスゴイわ、この人。
SUGAR BABE 「雨は手のひらにいっぱい」
山下達郎と大貫妙子が所属したシュガー・ベイブが残した唯一のアルバム『SONGS』。
どの曲も雨上がりの後の、少し湿気を含んだ爽やかな風のような印象だが、その中で「雨」を唄った一曲。
大貫妙子 「雨の夜明け」
ヨーロッパテイスト溢れる名作『ロマンティーク』。
”ながら”で聞くことなど到底不可能で、ただ酔いしれるために聴く一枚。
パリの夕暮れ時を思わせる曲が並ぶが、なかでも特に陰影に富んだ曲が「雨の夜明け」。
パリから南フランス~地中海沿岸に移って、少し明るく、よりPopになった次作『アヴァンチュール』。
ここに収録の「愛の行方」「最後の日付」の2曲は、特に「雨」を唄ったものではないのだが、どこかシトシトとそぼ降る雨の情景を喚起させる曲。
ここで挙げた3曲はすべて坂本龍一のアレンジによるもの。
南佳孝 「SCOTCH AND RAIN」
渋い。かっこいい。
これが大人の雨の打たれ方というやつか。
と、少しカンチガイしつつ、この唄の世界にあこがれていた当時高校二年だったワタシ。
”スコッチ、雨で割れば、言葉がいらなくなる”
こんな歌詞を唄ってサマになるのは、佳孝以外にいない。
ニューヨークの一流ミュージシャン達の名演をバックに、ハードボイルドな「男」の世界を歌い上げた超名作『Seventh Avenue South』収録。
『忘れられた夏』収録の「ブルーズでも歌って」 。
JAZZYなメロディにのせて、「雨に濡れた舗道をひとり歩く夜は」で始まり、「忘れようとしても出来ない、こんな雨の夜は」で終わるという、とんでもなく渋かっこいいナンバー。
気怠そうに歌う佳孝のVocalに、間奏のアルトサックスが効いてる。これにも憧れた。
『モンタージュ』収録の「夜の翼」もいい。
大瀧詠一 「雨のウェンズデイ」
「雨」の唄といえば『A LONG VACATION』収録のこの曲、と思っている人は案外多いのではなかろうか。
メロディも、大瀧詠一のVocalも、バックの音も、すべてが「雨に煙った情景」を完璧にかもしだしているのがすごい。
もう一曲、『Niagara Triangle vol.2』収録の「Water Color」もいい。
松任谷由実 「雨に消えたジョガー」
ユーミンの数あるアルバムの中では、この『時のないホテル』が個人的には一番気に入っている。
「雨に消えたジョガー」もそうなのだが、他のどの曲も陰影に富んでいて雨の日にピッタリ。
杉真理 「七番街の雨の朝」
杉真理の大傑作『Mistone』。
「時間の不思議さ」(”共時性”など)をテーマにした曲が続き、全体のストーリー性は高い。一冊の短編小説集を読んだような聴きごたえがある。
とはいえ、一曲一曲は耳障りの良いリバプール・サウンドの名曲が並ぶ。
この「七番街の雨の朝」を聴いていると、雨の日も悪くないと思える。
雨に濡れた女性の頭をそっと拭いてあげるような優しさに溢れている。
伊藤銀次 「センチメンタルにやってくれ」
このアルバム『BABY BLUE』で雨の唄と言えば、タイトル曲「BABY BLUE」か「雨のステラ」。
しかしこれら以上に雨の時に聴きたくなるのが、この「センチメンタルにやってくれ」。
失った過去を懐かしむでも悲しむでもなく、ただ想いながら、その時と同じ曲を聴く、という歌詞。
シックでいながら哀愁を含んだメロディに、チープなピアノとサックスが絡む。自分的にはとても大切な曲です。
佐野元春 「情けない週末」
『BACK TO THE STREET』収録。
雨がそぼ降る街中を歩く男と女。
男のままならない心情を、DOWN TOWNの薄汚れた風景と絡めて、見事に描いている。
男は「みんな雨に打たれてりゃいい」と心の中でつぶやく。
飯島真理 「雨の街で」「I feel blue」「9月の雨の匂い」
それぞれ順に『midori』『コケティッシュ・ブルー』『ミス・レモン』に収録。
飯島真理の作品は、梅雨の時期に聴くとよくハマるものが多いが、この三枚はその代表。
『midori』は、むせかえるような緑が息づく雨の季節に、さまざまに揺れ動く若い女性の心情を描いた作品。
『コケティッシュ・ブルー』は、もう少し経験を積んで大人の魅力を携えた女性が、雨にブルーな想いを寄せている。
『ミス・レモン』は、梅雨の晴れ間からのぞいた真夏の日差しのような作品。傷ついたり、切ない思いをしながら、それでも前を向く女性。
アルバムを聴き終わった後の清々しい印象はこれが一番で、個人的にも気に入っている作品。
ムーンライダーズ 「モダーン・ラヴァーズ」
ある意味、一番切ない曲かもしれない。
逃げるように「女」から旅立とうとするが、ずぶ濡れになって追いかけてきた「女」に、旅立ちを躊躇してしまった男。
飛行機は雨の中飛び立ってしまった。
「雨のエアポートはブルー」という歌詞が、ある痛みをもって胸に突き刺さる。
『MODERN MUSIC』収録。
SION 「街は今日も雨さ」
最後に、SIONの1stにして最高傑作『SION』から究極の名曲を。
「街は今日も雨さ」。Rockです。
自分にとっては無くてはならない曲になった。
若い頃は、抱きしめるように音楽を聴いていたが、歳を重ねるにつれ、そのような聴き方はしなくなっていった。
ただこの曲だけは、いまだに「抱きしめるように」聴いてしまう。
辛いこと、傷ついたことが多かった若い頃を何故か思い出してしまう。
「雨に打たれること」は、ひょっとしたら一番の癒しなのかもしれない。
リアルな歌詞が胸を打つ。
今宵はこれら名曲を聴いて、どっぷり雨の気分に浸ってください。